23/09/2009

ウィンティン氏:ビルマ国民に不要な「選挙」

2009年9月9日配信 ワシントン・ポスト(寄稿)
「わが国に自由をもたらす一縷の望みもないプロセスに参加するために、数百万のビルマ国民がデモに参加し、逮捕され、拷問され、命を落として求めてきた民主主義に関する諸原則をあっさり捨て去ることなど、私たちにはありえない」-ウィンティン氏

ジェームズ・ウェッブ米上院議員が私の母国を最近訪問し、タンシュエ上級大将と会談したこと、そしてノーベル平和賞受賞者アウンサンスーチー氏が投獄されたことに多大な関心が寄せられている。個人的には、ビルマの現政権との実質的な対話を求めるウェッブ氏の強い思いは理解できる。だが残念なことに、ウェッブ氏の努力は、私たちの民主化運動に悪影響を及ぼしており、誤った問題に焦点を当てている。その問題とは「選挙」の可能性のことだ。ウェッブ氏は私たちに対し、長期的な政治戦略の一環としてこの「選挙」への参加を検討するよう望んでいる。しかし軍事政権が予定する見せかけの選挙とは、わが国の国民が求める自由を完全に押し潰すものであり、軍事独裁政権の恒久化を実現するものだ。

 わが国で最後に行われた(訳注:1990年の)自由選挙では、ビルマ国民は国軍の支配を拒絶し、私たちの政党・国民民主連盟(NLD)に対して、8割以上の議席を割り当てる圧倒的な勝利をもたらした。にもかかわらず国軍はNLDの政権樹立をいまだ拒んでいる。選挙からこれまでの19年間、ビルマの民主化活動家は投獄や脅迫、拷問、そして死に直面してきた。正義、個々や民族の権利、ビルマ全国民を代表する民主政権を平和的に訴えたことがその理由だ。

 私たちNLDは民主化運動を断固として継続する一方で、現政権と話し合いのチャネルを開き、対話を開始する可能性を絶えず探ってきた。平和と相互信頼に基づき、ビルマの抱える政治問題と同時に社会問題を対処するための対話を目指してきた。誤解のないようにしておかなければならないが、この二つの問題はつながっているのだ。ビルマはかつてアジアの米所だった。だが今日では、軍政が国軍支配の維持を目的として破壊的な経済政策と弾圧を実施してきたために、ビルマは壊滅的なダメージを受け、貧困が蔓延する国になってしまった。

 軍政は見せかけの「選挙」を行うことで薄っぺらい合法性を纏おうとし、「規律ある民主主義」が来年には制度化されると喧伝している。だが2008年5月には、巨大サイクロンがビルマに未曽有の被害を与え、10万人以上の命を奪った直後であるにもかかわらず、政府は実にばかげたプロセスを実施し、投票者の93%が憲法を承認したと発表した。この憲法は国軍支配を恒久化するほか、定義のない「外国との関係」を持つ人物が公職に就くことを禁じている。これはスーチー氏と民主化活動家が公職に就くことを妨害するために設けられたご都合主義的な条項だ。

 国際的な観測筋の一部には、来年に予定されているこの選挙をチャンスと捉える向きもある。だが国軍製の憲法が押しつけられている状況下では、選挙はいんちきなものにしかならない。わが国に自由をもたらす一縷の望みもないプロセスに参加するために、数百万のビルマ国民がデモに参加し、逮捕され、拷問され、命を落として求めてきた民主主義に関する諸原則をあっさり捨て去ることなど、私たちにはありえない。

 NLDの諸要求には筋が通っている。この4月に、私たちは国軍との話し合いの実現に向けて新たな宣言を発表し、全政治囚の釈放、憲法の全面的な見直し、すべてのNLD支部の再開、結社の自由を求めた。軍政はこれに対し、スーチー氏ら2,000人の活動家を引き続き投獄し、民族集団に対する軍事的攻勢を強化し、民主主義を封じ込める規則を適用することで応えた。

 国際社会はどのようにして実質的な役割を果たすことができるだろうか。まずウェッブ氏のような当局者は中国脅威論を唱えるのを止めるべきだ。ウェッブ氏は中国の封じ込めと、それに対してビルマ軍政の協力を求めることを主張しているが、これは時代遅れで非現実的な見解に基づいている。スーチー氏はウェッブ氏に対して次のように述べ、こうした考え方を退けている。「私たちは相手がどこであれ、恐怖や不安を抱えて接することはありません。私たちはどの国とも、中国であれ米国であれインドであれ、平等かつ友好的に接します。近隣国を選ぶことはできないのですから、中国とよい関係を持つ必要があることは認識しています。」第二に、NLDは他国や国際機関に対して、ビルマ軍政指導部と接触し、私たちNLDと同時にビルマの民族集団と話し合いを行うよう説得することを求めている。米国など多くの国々がビルマに制裁措置を実施している。これは各国の独自の判断によるものであり、私たち皆が心から大切にしている民主的な価値観に対し各国が示す正当な連帯とも調和している。現政権がNLDと民族集団の代表者とまともに向き合い、政治囚を釈放し、少数民族への攻撃を停止し、真の民主国家建設に向けた追加的な処置をとるならば、これらの制裁は適切な時に解除されるだろう。

 それまでは、私たちの決意が揺らがないことをはっきりさせておきたい。NLDは、ビルマ社会の反映だ。私たちは、私たちの闘争の目標である自由をビルマ国民から奪ってしまう、致命的な欠陥のある政治プロセスに、脅迫や強制によって参加することはない。私たちにはいつでも話し合いに応じる用意がある。だが私たちには、あれほど多くの人々が自らの命と自由を犠牲にし、獲得しようとしてきた民主的な価値観を求める闘争を継続するという固い決意があるのだ。

*ウィンティン氏はビルマの国民民主連盟(NLD)中央執行委員で創設者の一人。1989年から2008年まで政治囚として投獄されていた。

日本語訳 ビルマ情報ネットワーク(翻訳・掲載許可取得済)

出典:U Win Tin, “An 'Election' Burma's People Don't Need,” Washington Post (op-ed), September 9, 2009. 
原文(英語) 
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/09/08/AR2009090802959.html 

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17/08/2009

米議員が10年ぶりミャンマー訪問 軍政トップと会談へ

【ワシントン=村山祐介】米国務省のクローリー次官補は14日の会見で、ウェッブ上院外交委員会アジア太平洋小委員会委員長(民主党)が同日ミャンマー(ビルマ)入りしたことを明らかにした。

米連邦議員のミャンマー訪問は約10年ぶり。15日には、米要人として初めて軍事政権トップのタン・シュエ国家平和発展評議会議長と会談する予定だ。民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんの即時解放や、スー・チーさんの自宅に侵入したとして実刑判決を受けた米国人男性の釈放を求めるとみられる。

 表向きは「米政府とは別」との立場からの接触だが、ウェッブ氏は事前に米政府から説明を受け、現地滞在中は米大使館員が同行している。

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米上院議員がスー・チーさんと面会 米国人男性釈放へ

【バンコク=藤谷健】ミャンマー(ビルマ)訪問中のウェッブ米上院議員(民主党)は15日、首都ネピドーで軍事政権トップのタン・シュエ国家平和発展評議会議長と会談した。その後、最大都市ヤンゴンにある政府のゲストハウスで、自宅軟禁中の民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんとも面会した。

92年に軍政トップについたタン・シュエ氏が米要人と会うのは初めて。会談でウェッブ氏は、スー・チーさんの即時解放やスー・チーさんの自宅に侵入したとして7年の実刑判決を受けた米国人男性の釈放を求めた。ウェッブ氏の事務所によると、米国人男性は16日、国外退去処分の形で釈放されるという。

 スー・チーさんとの面会は会談後に許された。関係者によると、会談は25分ほど続いたという。潘基文(パン・ギムン)国連事務総長も7月のミャンマー訪問でスー・チーさんとの面会を希望したが軍政側は認めておらず、今回は異例の厚遇を見せた。

 ウェッブ氏は上院外交委員会アジア太平洋小委員長を務める有力議員。オバマ政権はミャンマーとの関係見直しに言及している。しかしスー・チーさんの自宅軟禁の継続決定で米欧を中心に国際社会の批判が一層強まっており、軍政側は柔軟姿勢を示すことで批判を和らげたいとの思惑があると見られる。

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スー・チーさん宅侵入の米国人男性、ミャンマー出国


【バンコク=山本大輔】ミャンマー(ビルマ)軍事政権は16日、民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさん(64)の自宅に侵入したなどとして同国の特別法廷で実刑判決を受けた米国人ジョン・ウィリアム・イエトー氏(54)を国外退去処分とした。同氏はミャンマーを訪れていたウェッブ米上院議員(民主党)とともに出国し、タイのバンコクに到着した。
米要人として初めて軍政トップのタン・シュエ国家平和発展評議会議長と会談したウェッブ議員の要請に応えたもの。議員はバンコクで記者会見し、「人道的な観点からイエトー氏の解放を求めたが、(スー・チーさんに)危害を与えた彼の行為は大変遺憾だ」と述べた。

 イエトー氏は5月初め、「テロが予見されたので警告したかった」としてスー・チーさん宅に侵入して当局に逮捕され、今月11日に7年の実刑判決を受けた。スー・チーさんは同氏を数日間滞在させたことから有罪判決を受け、自宅軟禁1年半になった。03年から続く自宅軟禁の期限切れが11月に迫る中、イエトー氏の行為は軍政に軟禁延長のきっかけを与えた形で、各国から批判が集中していた。

 また、ウェッブ議員は会見で、「スー・チーさんの解放がなければ来年の総選挙が自由で公平なものになると世界が信じることは不可能だ」とタン・シュエ議長に伝えた、と説明した。

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オバマ大統領、ミャンマー非難 「国際社会の意見聞け」

【ワシントン=村山祐介】ミャンマー(ビルマ)の民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんに対する有罪判決について、オバマ米大統領は11日、「普遍的な人権の理念に背き、東南アジア諸国連合(ASEAN)憲章に逆らい、国連安全保障理事会の声明を無視したことをはっきり示すものだ」とミャンマーの軍事政権を厳しく非難する声明を出した。

大統領は「私は国際社会とともにスー・チーさんの即時無条件解放を求める」とも述べ、国際的な連携を強める姿勢を強調。軍政に「真の国民和解のために国民や国際社会の意見を聞き入れることを求める」と迫った。訴追の原因をつくった米国人男性への7年の実刑判決にも「行動とは不釣り合いな懲罰だ」と懸念を示した。

 オバマ政権はこれまで、対ミャンマー政策の見直し作業を先延ばしにして裁判の行方を注視してきた。国務省のクローリー次官補は同日の会見で、有罪判決が「政策に否定的な影響を与えるのは明らかだ」と述べ、より厳しい態度で臨むことを示唆。国連安保理での制裁については「時期尚早」と態度を保留したものの、「判決に対して何をすべきか各国と密接な協議をするだろう」と述べた。

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15/08/2009



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13/08/2009

スー・チーさん軟禁1年半に、軍政決定 総選挙から排除

【バンコク=藤谷健】ミャンマー(ビルマ)の民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさん(64)が、米国人を無断で自宅に滞在させたとして国家防御法違反の罪に問われた裁判の判決公判が11日、最大都市ヤンゴン郊外の特別法廷であり、労働を伴う3年の実刑判決が言い渡された。だが、直後に入廷した軍事政権の内相が判決を1年6カ月に減刑し、自宅軟禁にするとの政権の決定を伝えた。

スー・チーさんは約3カ月ぶりに自宅に戻され、これまで通算で14年近くに及ぶ拘束・軟禁状態がさらに続くことになった。軍政側には1年半の軟禁で、来年予定される総選挙からスー・チーさんを排除する意図があるのは明らかで、国際社会からは「悲しみと怒りを感じる」(ブラウン英首相)などと批判が相次いでいる。

 決定は、軍政トップのタン・シュエ国家平和発展評議会議長の名前で伝えられた。軍政側には、同罪では法定で最も軽い3年の刑とし、スー・チーさんを収監せず自宅軟禁にする「配慮」を見せることで国際社会の非難を和らげる狙いがあるとみられるが、活動の自由が奪われることに変わりはない。

 裁判で検察側は、スー・チーさんが自宅軟禁中の5月初め、湖を泳いで侵入してきた米国人男性を滞在させ、食事を与えたことが外部との接触を禁じた国家防御法の規定に抵触すると主張。弁護側は侵入を許した警察に責任があるとして無罪を主張していた。

 弁護側は控訴も検討するとしているが、軍政下で判決が覆る可能性は極めて低い。またこの日、米国人男性に懲役刑を含む7年の実刑が言い渡されたほか、スー・チーさんの自宅で働く家事手伝いの女性2人も1年半の自宅軟禁に置かれることが決まった。

 軍政が掲げる「民政移管プロセス」では来年に総選挙を実施し、新政府を発足させて民政移管するとしている。しかし、多くの民主化運動家が「政治犯」として投獄されており、公正な選挙を求める国連や民主化勢力などは、総選挙前にスー・チーさんを含む全政治犯を解放するよう軍政に強く求めていた。

 スー・チーさんを再び自宅軟禁としたことで、「民政移管プロセス」の正当性に一層大きな疑問符がつくことになった。

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